2025年12月15日、Jリーグは大きな変革の象徴となる一大イベントを発表した。2026年シーズンから秋春制への移行を控え、その移行期となる2026年前半の特別シーズンを彩るクライマックスとして、17年ぶりに「Jリーグオールスター」が復活する。その名も「JリーグオールスターDAZNカップ」。これは単なるエキシビションマッチではない。J1、J2、J3の全60クラブが参加し、カテゴリーの垣根を越えて真の「オールスター」を決定する、前代未聞の1DAYトーナメントである。
シーズン移行の架け橋となる「感謝」のプロジェクト
1993年の開幕から33年。10クラブで始まったJリーグは、今や60クラブを擁する巨大なフットボールコミュニティへと成長した。この発展を支えてきたのは、選手やクラブ関係者だけではない。ファン・サポーター、スポンサー、地域社会、そしてメディア。数えきれない人々の情熱が、今日のJリーグを築き上げてきた。
2026年8月からの秋春制移行は、日本サッカーが世界の舞台で伍していくための大きな決断だ。この歴史的な転換点を前に、Jリーグは2026年前半を「感謝」を伝える特別な期間と位置づけた。その中心となるのが「JリーグオールスターPROJECT」であり、その集大成がこのオールスター戦なのである。
プロジェクトのロゴには、感謝の象徴として「リボン」がモチーフとして用いられている。J1、J2、J3を表す3色のリボンが結びつくデザインは、カテゴリーを超えた全クラブの繋がりと、これまでJリーグを支えてきたすべての人々への想いを表現している。
1日で王者が決まる!変則トーナメントの全貌
2026年6月13日(土)、サッカーの聖地・国立競技場(MUFGスタジアム)を舞台に、全7試合がわずか1日で繰り広げられる。大会は、2026年特別シーズン「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」で編成される6つの地域グループを基にしたチーム対抗のトーナメント方式で行われる。
トーナメントの仕組み
最大の特徴は、J1チームがシードされる点だ。まず、J2・J3の混合オールスターチームが1回戦を戦い、その勝者が待つJ1オールスターチームへの挑戦権を懸けて争う。 下記JリーグHPの公式リリースより引用。

【グループ分け】
| カテゴリー | グループ名 | 所属クラブ数 |
| J1 | EAST | 10 |
| J1 | WEST | 10 |
| J2/J3 | EAST-A | 10 |
| J2/J3 | EAST-B | 10 |
| J2/J3 | WEST-A | 10 |
| J2/J3 | WEST-B | 10 |
【試合方式】
•1回戦:
•J2/J3 EAST-A vs J2/J3 EAST-B
•J2/J3 WEST-A vs J2/J3 WEST-B
•準決勝:
•(EAST 1回戦勝者) vs J1 EAST
•(WEST 1回戦勝者) vs J1 WEST
•決勝:
•(EAST準決勝勝者) vs (WEST準決勝勝者)
さらに、3位決定戦と5位決定戦も行われ、全チームが最後まで順位を競い合うことになる。
変則ルールがもたらす予測不能なドラマ
この1DAYトーナメントをさらにスリリングにするのが、特別な試合時間だ。
•1回戦・準決勝・決勝: 30分(前後半なし)
•3位・5位決定戦: 20分(前後半なし)
通常の90分ゲームとは全く異なる超短期決戦。交代枠や戦術、そして試合の入り方が勝敗を大きく左右するだろう。一瞬の隙も許されない緊張感の中、選手たちの閃きや監督の采配が、予測不能なドラマを生み出すことは間違いない。
あなたの一票がスターを選ぶ!選手選考の仕組み
この夢の舞台に立つ選手は、主にファン・サポーターの投票によって選ばれる。選考方法は、大きく分けて2つだ。
① ファン・サポーター投票
最も多くの選手が選ばれるのが、このファン投票だ。2026年2月から5月にかけて、以下の方法で毎週投票が行われる。
•スタジアム来場者: 試合会場での投票
•DAZN視聴者: 試合中継と連動した投票
•JリーグID登録者: Jリーグ公式アプリやウェブサイトからの投票
Jリーグに関わるあらゆるチャネルを通じて、誰もが投票に参加できる仕組みだ。お気に入りの選手、見てみたい組み合わせ、カテゴリーの枠を超えた夢の共演。あなたの「見たい」を直接ピッチに届けることができる。
② ベストイレブンからの選出
「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」の各地域グループから選出されるベストイレブンも、オールスターチームの重要な構成要素となる。
•J1百年構想リーグ: 11名 × 2グループ(計22名)
•J2・J3百年構想リーグ: 11名 × 4グループ(計44名)
シーズン前半戦で最も輝きを放った選手たちが、その実力をもってオールスターへの切符を掴む。ファン投票の人気と、シーズンでの実績。この2つの側面から選手が選ばれることで、実力と人気を兼ね備えた、まさに「オールスター」と呼ぶにふさわしいチームが誕生する。
さらに、ポジションのバランスなどを考慮し、Jリーグ推薦による追加選出も予定されている。ただし、2026年FIFAワールドカップのメンバーに選出された選手は、代表活動を優先するため本大会には出場できない。
伝説のプレーが蘇る。過去のオールスターハイライト
Jリーグオールスターサッカーは、1993年のJリーグ開幕元年から2007年まで、夏の風物詩としてファンに愛されてきた。数々の名場面と伝説が、ここから生まれている。
初代MVPは“キングカズ”
記念すべき第1回大会(1993年7月17日、神戸ユニバー記念競技場)でMVPに輝いたのは、当時ヴェルディ川崎に所属していた三浦知良だった。J-EASTの一員として出場したカズは、華麗なプレーで4万人以上の観衆を魅了し、チームを2-1の勝利に導いた。Jリーグの幕開けを象徴するスターが、その輝きを余すところなく発揮した瞬間だった。
日韓対決の激闘「JOMO CUP」
2008年と2009年には、大会の形式をリニューアルし、韓国のKリーグ選抜と対戦する「JOMO CUP ALLSTAR SOCCER」が開催された。国の威信をかけた戦いは、通常のオールスターとは異なる激しいぶつかり合いとなり、多くのファンの記憶に刻まれている。特に2009年にJ-ALLSTARSの監督を務めた鹿島アントラーズのオズワルド・オリヴェイラ監督(当時)が見せた闘志あふれる采配は、今も語り草となっている。
若き日のレジェンドたち
2007年の最後のオールスターには、後に日本サッカーを牽引することになる若き日の才能たちが集結していた。当時、浦和レッズの小野伸二、川崎フロンターレの中村憲剛、そして鹿島アントラーズの内田篤人。彼らは同じ「J-EAST」のチームメイトとしてプレーした。この3人が同じピッチに立ったという事実は、オールスターならではの豪華さを物語っている。
選手だけじゃない!Jリーグを支える全ての「スター」たちへ
今回の「JリーグオールスターPROJECT」は、ピッチ上の選手だけに光を当てるものではない。33年の歴史を支えてきたピッチ外の「オールスター」たちにも焦点を当てる企画が多数予定されている。
記者会見に登壇した中村憲剛氏は「支えてきた皆さんにもフォーカスが当たる。サッカーに関わるみんなで盛り上げられる1日にできたら」と語り、内田篤人氏も「芝生を管理する人、ボランティア、寮のおじちゃん、おばちゃん」といった、選手を陰で支える人々の名を挙げた。Jリーグ創設の理念である「地域密着」を体現する、心温まる試みとなりそうだ。
17年の時を経て、感謝と未来への希望を胸に復活するJリーグオールスター。それは、単なるサッカーの試合ではない。Jリーグに関わる全ての人が主役となる、最高の祭典になるだろう。2026年6月13日、国立競技場で新たな歴史が刻まれる。
参考文献
1.Jリーグ公式サイト. (2025年12月15日). 「JリーグオールスターPROJECT」について. https://www.jleague.jp/news/article/32814/
2.Jリーグ公式サイト. (2025年12月15日 ). 「JリーグオールスターDAZNカップ」開催. https://www.jleague.jp/news/article/32813/
3.Jリーグ公式サイト. (2025年12月15日 ). 明治安田Jリーグ百年構想リーグのグループ組み合わせを決定. https://www.jleague.jp/news/article/32795/
4.サッカーキング. (2025年12月15日 ). 2007年に共にオールスターのピッチに立ったレジェンド3名、選手以外にも光が当たる“オールスター”の復活に「存分に楽しんでほしい」. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/6c5182a2df83b54d0b132f0d0cd240cb819110ca
5.ゲキサカ. (2025年12月15日 ). Jリーグオールスターが来年6月に開催!! J1・J2・J3全60クラブの代表選手が一同に会する「1DAYトーナメント」に. https://web.gekisaka.jp/news/jleague/detail/?442841-442841-fl
6.サッカーキング. (2025年12月15日 ). Jリーグ、17年ぶりのオールスターゲーム開催を発表! 来年6月13日に『国立競技場』で実施. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/b6d2d2192e1b1b21865d4e9907d92e663f0c82a4
7.Wikipedia. Jリーグオールスターサッカー. https://ja.wikipedia.org/wiki/J%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC
オールスター復活がもたらす新たな価値
17年ぶりの復活は、単なるノスタルジーに留まらない 。今回のオールスターは、Jリーグが新たなステージへ進むための起爆剤としての役割を担っている。
カテゴリーの壁を越えた化学反応
これまで、J1、J2、J3の選手が同じ公式の場でチームを組んで戦う機会は皆無だった。J2やJ3には、J1に勝るとも劣らない実力を持ちながらも、なかなかスポットライトを浴びる機会のなかった選手が数多く存在する。彼らがこの夢の舞台でJ1のスター選手と対峙し、あるいは共闘することで、どのような化学反応が生まれるのか。ベテランの熟練の技、若手の野心あふれるプレーが交錯するピッチは、Jリーグ全体のレベルの高さを証明するショーケースとなるだろう。
特に、30分という超短期決戦は、J2・J3のチームにとって「ジャイアントキリング」を起こす絶好の機会となる。勢いに乗ったチームが、戦術と一瞬の集中力でJ1のスター軍団を打ち破る。そんな下剋上ストーリーは、多くのファンを熱狂させるに違いない。
若手選手にとっての登竜門
この大会は、未来の日本サッカーを担う若手選手にとって、またとないアピールの場となる。ファン投票やベストイレブンに選出され、国立競技場のピッチに立つ経験は、彼らのキャリアにおいて大きな自信となるだろう。普段は対戦することのないトッププレーヤーたちとの真剣勝負は、技術的にも精神的にも大きな成長を促す。ここで鮮烈なインパクトを残した選手が、一気にスターダムへと駆け上がり、さらには日本代表への道を切り拓く可能性も十分にある。
ファンとリーグの新たな関係構築
ファン投票が選手選考の根幹をなすことは、ファンが「リーグの主役」であることを改めて示すものだ。自分の応援するクラブの選手をオールスターの舞台へ送り込みたいという想い。カテゴリーやクラブの垣根を越えて、純粋に「見てみたい」選手に投票する楽しみ。このプロセスを通じて、ファンはリーグ運営への参加意識を高め、Jリーグ全体への帰属意識を深めていくことになるだろう。
毎週のように投票が行われ、その中間結果が発表される過程は、それ自体が大きなエンターテインメントとなる。SNSでは「#私ならこのイレブン」といったハッシュタグが飛び交い、ファン同士の議論が活発化するだろう。オールスター戦は、試合当日だけでなく、数ヶ月にわたる壮大な「お祭り」なのである。
まとめ:未来へ繋がる感謝の祭典
2026年6月13日。その日は、単にJリーグのスター選手が集う一日ではない。それは、Jリーグが33年の歴史の中で関わってきたすべての人々へ感謝を捧げ、そして秋春制という新たな未来への船出を祝う、記念すべき一日となる。
過去のレジェンドたちが築き上げた歴史へのリスペクト。現在進行形でリーグを盛り上げる選手たちのプライド。そして、未来を担う若き才能の台頭。Jリーグの過去、現在、未来が、国立競技場のピッチで交錯する。
ファン投票に参加し、自分だけのドリームチームを思い描き、そして当日の熱戦を見届ける。この歴史的な祭典を、我々は目撃者として、そして参加者として、心ゆくまで楽しむことができるのだ。17年の時を経て、さらにパワーアップして帰ってきたJリーグの祭典。その開幕は、もうすぐだ。

コメント